とうとうここにも……キちまいやがりました。ナニがって?……風邪のウィルすがよ。ずっと気を張ってたんですが、ありますよね、ふと弱気になる寒い日の午後……。思い起こせば、あの日オイラは死んだのでありまス。
先週会社に行った時、みんなもう風邪引き終わってて、多分その時風邪のウィルスは思ったね、「ヤバイ、皆抗体もってやがる。このままじゃオレ達絶滅しちゃうってばよ!」
手当たり次第にヒトの体の中に飛び込んでも、スグにT細胞がすっとんできて自分を殺しまくるその惨劇。ジェノサイド。そんなとき、そいつらにまだ感染してない彼ラにとっては神様みたいなオイラが、久しぶりに出勤だ。
「よーし、みんな飛び込めーイ!」ヤツラは悦び勇んでオイラの中に侵入。条件がピッタリ合う日に向けてじっと待ちつづけた……。
その日、北森は仕事部屋に篭って作業をしていた。その部屋にはエアコンがあるが、どうも利きが弱く、乾燥するばかり。北森はブルブル震えつつ、コーヒーをがぶ飲みしながらモニターに向かっていた。
「さむいーはらへったー」
その時ふと……虚無が……心に……「ド・ウ・デ・モ・イ・イ・ヤ・」。
長い時間潜伏し、そろそろ食料、状況ともに限界か?将軍は作戦の中止を全軍に伝える用意をしつつ、眉根を寄せていた…が…… 響き渡る鬨の声。そして北森は風邪を引いた。